第25巻目次

25巻1号 (2005年6月17日発行)

• 種別:

  論文

  著者:

  荻野孝野・木村睦子・吉田紀子・小林正博・井佐原均

  題名:

  日本語動詞の結合価記述に必要な意味分類項目と意味分類項目数

  ページ:

  1-31

  ディスクリプタ:

  結合価記述、動詞、意味的制約、意味分類項目数

  概要

  動詞の結合価を記述するために、動詞にかかる体言部分の意味制約を記述する。 その意味制約を記述するために意味分類項目がどれぐらい必要かを検討したもの である。従来、結合価を記述するにあたって、既存のシソーラスの意味分類項目 などを利用してきたが、総合的な意味で類似の単語を集めた意味グループと、動 詞の記述に必要な意味グループはグルーピングの観点が異なり、結合価の記述に は不要な意味分類、あるいは不足の意味分類もある。本研究では、実際に仮の意 味分類項目を作りながら結合価記述を行って、その結果から体言部分の意味分類 項目を整理し、結合価記述に必要な意味分類項目のセットを作成した。なお、こ れらの結果から結合価記述をする動詞の概念数とそれに必要な意味分類項目数の 数量的関係についても検討を行った。

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• 種別:

  調査報告

  著者:

  陳志文

  題名:

  男性誌と女性誌に見られる文体特性の相違―「論理的」と「感性的」―

  ページ:

  32-45

  ディスクリプタ:

  男性誌，女性誌，文体特性，主成分分析

  概要

  本稿では前稿の研究結果及び中村（1993）の指摘などにより，「読者意識」が男 性誌と女性誌の文体差に反映されているという仮説を立てた。次に，男性誌と女 性誌を6誌ずつ集め，それぞれの雑誌について25項目の文体指標にわたって調査 した。その調査結果に対し「主成分分析法」をかけ，12誌を8つの文体類型に分 類し，仮説を検討した。その分類の検討から女性誌の文体特性は「会話調引用型 −非論理抒情型」であり，男性誌の文体特性は「文章調非引用型−論理叙事型」 であることが判明した。概略的に言えば，女性誌の文体は「より感性的」であり， 男性誌の文体は「より論理的」であると解釈できる。よって，最初の仮説は正し いことが証明された。

25巻2号 (2005年9月16日発行)

• 種別:

  論文

  著者:

  伊藤雅光

  題名:

  計量語彙論のための日英共通品詞分類

  ページ:

  65-88

  ディスクリプタ:

  松下大三郎、渡辺実、冨士谷成章、樺島忠夫、H.Sweet、 O.Jespersen、 国立国語研究所、一般文法、英文法、学校文法、日英対照研究、対照語彙論、 日英混交テクスト、前置詞、後置詞

  概要:

  本稿の目的は，計量語彙論のための日英共通品詞分類のモデルを４種類提案する ことにある．日英共通品詞分類は日本語と英語との対照研究のためには重要な道 具立てとなる．日英共通品詞分類への応用を検討する品詞分類モデルとして，日 本語からは松下文法，山田文法，渡辺文法，そして樺島忠夫氏と国立国語研究所 の品詞分類を，英文法からはH. Sweetと O. Jespersen の品詞分類をとりあげ，表 １のような４つの日英共通品詞分類のモデルを提案した．

  表1: 伊藤分類・学校文法・英文法の対照表
  

  3分類b	4分類b	4分類a	3分類a	学校文法	伝統的英文法
  体	体	体言	体言	名詞	名詞・代名詞
  用	用	用言	用言	動詞	動詞
  				形容(動)詞	なし
  		相言	相言	連体詞 副詞	形容詞 副詞
  	感	感言		陳述の副詞 接続詞 感動詞	なし 接続詞 間投詞

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• 種別:

  ノート

  著者:

  伊藤雅光

  題名:

  計量言語学とコーパス言語学

  ページ:

  89-97

  ディスクリプタ:

  推測統計学、語彙調査、単位認定問題、語彙表の精度、コーパスの設計デザイン、 ブラウン・コーパス、国研・新聞３紙データベース

  概要:

  計量言語学とコーパス言語学は親子関係にあるため，内容面で重なっている部分 がすくなくない．しかし，伝統的な計量言語学の成果を知らずに，新しいコーパ ス言語学に走る文系の研究者が多くなったため，現在「研究の質の劣化」という 深刻な事態が進行しつつある．そこで，本稿ではそのような事態を改善するため に，以下の五つの注意点について私見を述べた．

  1. 研究テーマとコーパスの文体との妥当性．
  2. 研究テーマと単位認定との妥当性．
  3. コーパスの本文内容を把握しているか．
  4. コーパスの設計デザインを把握しているか．
  5. プログラミング技術の必要性

25巻3号 (2005年12月発行)

• 種別:

  調査報告

  著者:

  宮田剛章

  題名:

  「お」か「ご」か？日本語母語話者による名詞の敬語化: 日本語能力試験の語彙から

  ページ:

  103-122

  ディスクリプタ:

  敬語の接頭辞「お」と「ご」、日本語能力試験の語彙、 対数線形モデル

  概要:

  敬語は日本語を母語としない日本語学習者にとって最も習得困難な項目の１つであること は誰しも認めるところであろう。しかしながら、敬語動詞が専ら注目されてきたものの、 敬語名詞に関して日本語教育学の見地から研究されたものは少ない。

  本稿では、若年層の日本語母語話者を対象に、日本語能力試験の１級までの出題範囲に 含まれる名詞について、どれに敬語の接頭辞「お」または「ご」が付くのか、名詞への 付着度を算出する。またその付着度の要因が何かを対数線形モデル（カテゴリーの主効果 とその組み合わせによって起こる交互作用を算出するために、多次元クロス表に 応用した統計手法）を用いて明らかにしていく。

  「お」および「ご」の付着について、その付着を促す要因の組み合わせが見つかった。 全体的に、形態的動作性がありかつ語頭が「お」で始まらない３拍の和語と混種語に 「お」が付きやすく、また形態的動作性がありかつ語頭が「ご」で始まらない４拍の 漢語に「ご」が付きやすい傾向があることが明らかとなった。

• 種別:

  調査報告

  著者:

  乾孝司・奥村学

  題名:

  文書内に現れる因果関係の出現特性調査

  ページ:

  123-144

  ディスクリプタ:

  因果関係、定量調査、コーパス

  概要:

  本稿では，文書内に現れる因果関係の出現特性を調査した結果について述べる． まず，因果関係情報を一定量の文書集合に対して付与し，因果関係タグ付きコーパスを作成する． その後，コーパスに付与された情報を元に，文書内での因果関係の出現傾向を定量的に調査する． 因果関係は定義すること自体が困難な概念であり，従来，因果関係の有無の判断には，人間の主観に頼らざるをえなかった． 本研究では，因果関係情報を付与する際，言語テンプレートに基づく判断基準を採用し，得られる因果関係情報からタグ付け作業者の主観をできる限り排除することを試みる． 出現特性の調査項目として，（i）手がかり標識の有無， （ii）出来事表現の統語カテゴリ，（iii）出来事表現の文内位置， の３つの観点を取り上げ，因果関係が多様な言語表現形態で，かつ，多様な位置に現れることを示す．

25巻4号 (2006年3月発行)

• 種別:

  論文

  著者:

  李在鎬、井佐原均

  題名:

  第二言語獲得における助詞「に」の習得過程の定量的分析

  ページ:

  163-180

  ディスクリプタ:

  助詞「に」、文法構文、第二言語習得過程

  概要:

  本稿の目的は二点ある。一点目に、日本語学習者の言語使用を定量的に捉え、助 詞「に」の習得に見られる複雑な構造を記述分析する。二点目に文法的現象に対 するコーパスの具体的な利用法および方法論を提案する。主としてOPIテストの 発話データベースを利用し、日本語学習者の「に」の使用例を文脈的特徴からク ラスタリングする。そこから「に」の運用の背後に存在する特性を明らかにする。

  考察に際しては、まず「KYコーパス」における韓国語母語話者の発話データか ら助詞「に」の使用例を収集した。次に「に」の生起文脈を18変数でコード化 し、クラスタ分析した。その結果、次の三点が明らかとなった。

  1. 初級、中 級、上級学習者のいずれにおいても場所用法（e.g., 大学に入る）がもっとも 安定して観察されること。
  2. レベルが上昇するにつれ、対人的用法（e.g., 先生にあげる）が増加し、対象用法（e.g., 自転車に乗る）が減少すること。
  3. 個々のクラスタは（単一要素の制約によるものではなく）要素間の複雑な 相互作用の結果として立ち現れる。

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• 種別:

  論文

  著者:

  横山詔一

  題名:

  字体選好は新聞漢字頻度から予測可能か

  ページ:

  181-194

  ディスクリプタ:

  異体字，選好，親近度，フェヒナーの法則，単純接触効果，2肢強制選択法

  概要:

  日本語の漢字には「異体字」の豊富なバリエーションが存在する。異体字と は「桧−檜」のように読みと意味は同じで字体だけが異なる文字の集合を指 す。本研究は，新聞漢字頻度データから「字体選好課題」の結果がどのくら い正確に予測できるかを検討した。字体選好課題とは，ワープロやパソコン を打っている場面で異体字ペアのどちらをより使いたいか被験者に選択させ る課題である。263組の異体字ペアを85名の被験者に呈示したデータを分析 に用いた。精神物理学の分野で有名なフェヒナーの法則（Fechner's law） を出発点として，旧字体頻度と新字体頻度の比を求め，それを対数変換した 説明変数から旧字体選好率を予測する回帰式を求めた。その結果，目的変数 と説明変数の相関はr=.73に達することが示された。これを接触相対性モデ ル（exposure relativity model）と名付けた。

25巻5号 (2006年6月発行)

• 種別:

  論文

  著者:

  横山 詔一

  題名:

  異体字選好における単純接触効果と一般対応法則の関係

  ページ:

  199-214

  ディスクリプタ:

  選好，単純接触効果，価値関数，対応法則，フェヒナー法則，親近度

  概要:

  異体字選択における意思決定が漢字頻度からどの程度予測できる かについて検討した。異体字とは「桧−檜」のように読みと意味は 同じで字体だけが異なる漢字の集合を指す。社会心理学の単純接触 効果，経済学の価値関数，精神物理学のフェヒナー法則，動物行動 学の一般対応法則，生態学の理想自由分布理論などをロジスティッ ク回帰分析に結びつけ，新聞漢字頻度から旧字体選択率を予測する 接触相対性理論を導出した。この理論の妥当性を検証するため，字 体選好課題のデータを収集して予測力を評価した。字体選好課題と は，情報機器で漢字を書いている場面を実験参加者にイメージさせ， 異体字263ペアについての選好判断を2肢強制選択法で求めるもので あった。その結果，漢字頻度に基づいて算出した接触相対性と実際 の観測値の間には強い正の相関関係がみられ（r＝.81），予測式の 説明率は65%に達した。これから，異体字選好は新旧字体ペア間で の接触頻度の相対比によって6割以上が決定されることが明らかに なった。人間と字体との接触頻度が増加すると単純接触効果が生じ， その字体に対する好意度が高くなる，という流れによって字体の選 択率が変化すると考えられる。

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• 種別:

  論文

  著者:

  金 愛蘭

  題名:

  新聞の基本外来語「ケース」の意味・用法 --- 類義語「事例」 「例」「場合」との比較---

  ページ:

  215-236

  ディスクリプタ:

  外来語，基本語彙，外来語の基本語化，同格連体名詞，類義語

  概要:

  20世紀末の新聞において外来語「ケース」が基本語の位置にある のはなぜかを共時的に追求した。具体的には，「ケース」の新聞文 章における意味・用法を，類義語「事例」「例」「場合」と比較し， 以下のことを明らかにした。

  1. 「ケース」は，連体修飾節構造における客観的同格連体名詞と いう用法において最も多用されている。
  2. この用法において，「ケース」は，連体修飾節では「（すでに 起こった）良くないコトガラ」を，後続の主節述語では〈多い ／有る〉ということを表す表現に，類義語「例」「場合」 （「事例」）よりも明らかに多く用いられている．
  3. この「（すでに起こった）良くないコトガラ（＝ケース）が 〈多い／有る〉」という表現は，新聞において報道される機会 がきわめて多い。「ケース」が現在の新聞文章で基本語たりえ ているのは，こうした表現に用いられる語として，類義の３語 よりも積極的にはたらいているからだと考えられる．

  以上のような「ケース」の意味・用法が20世紀後半の新聞でどの ように形成されてきたかを明らかにするためには，「ケース」およ びその類義語についての通時的な調査が必要である．

25巻6号 (2005年9月22日発行)

• 種別:

  論文

  著者:

  宮田　剛章

  題名:

  敬語名詞および敬語機能の分類−日本語母語話者の判断を通して−

  ページ:

  245-261

  ディスクリプタ:

  敬語名詞の機能，敬語の接頭辞「お」・「ご」， コレスポンデンス分析

  概要:

  本稿の目的は，若年層の日本語母語話者を対象にした調査を通じ， 高頻度で敬語の接頭辞「お」および「ご」が付着した敬語名詞（接頭辞 「お」または「ご」のついた名詞）がそれぞれどのような機能を持つのか について明らかにし，敬語名詞の分類法を提示していくことである．

  各々の敬語名詞に出現した機能には，尊敬語，謙譲語，美化語など従来の機能を １つ持つだけでなく，従来の機能を複数持つ敬語機能もあり，日本語母語 話者がそれらの中で判断が揺らいでいることが確認された．一方，コレス ポンデンス分析の結果，敬語機能が主に４つのグループ（謙譲語・尊謙語 系，尊敬語系，美化語・丁寧語系，無所属系）に分けられ，それぞれのグ ループの中で敬語機能が揺れていることが分かった．また敬語名詞の中に はグループを隔てた揺れを見せるもの，つまりどのグループにも定まって いない敬語名詞も見られたが，機能のグループに沿ってほぼ分類された．

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• 種別:

  論文

  著者:

  朴　良順

  題名:

  日韓バイリンガル中高生における二言語による敬語行動−母語話者との対照を中心に−

  ページ:

  262-281

  ディスクリプタ:

  滞日韓国人中高生，母語話者，敬語行動，「ペンを借りる」，丁寧度

  要約:

  日韓バイリンガル中高生119名を対象とし，「ペンを借りる」という依頼表現を 中心に，どんな相手にどのような表現を使うかを計量的に調査・分析し，母語話 者との対照を試みた．まず，両母語話者の敬語行動は，韓国語母語話者の場合， 年上には敬体，同年・年下には常体という「年齢」による敬語行動をとるが，日 本語母語話者の場合，年上でも親しい間柄には常体，同年・年下でも親しくない 間柄には敬体という「親疎」による敬語行動をとっていた．これに対し，日韓バ イリンガルの敬語行動は，次の3点において特徴的であった．

  1. 日韓バイリンガル中高生の使用する日本語・韓国語はそれぞれ，モノリン ガル話者の使用する言語実態に近いものの，いずれの日韓モノリンガル話 者とも一致せず，その中間に位置づけられる．
  2. （1）の背景として，日本語の場合には「親疎関係重視」という規則を適用 しつつ一部韓国語の「上下関係重視」という規則をかぶせ，逆に韓国語の 場合には「上下関係重視」という規則を適用しつつ一部日本語の「親疎関 係重視」という規則をかぶせているということが考えられる．
  3. さらに，（1）のような敬語行動には，来日時期による差異がみられないこ とから，日韓両言語の影響を受けたバイリンガル年少者特有のものである と考えられる．

25巻7号 (2006年12月発行)

• 種別:

  論文

  著者:

  橋本 和佳

  題名:

  Logistic曲線による外来語増加過程のモデル化: 大正から平成までの社説を用いて

  ページ:

  293-308

  ディスクリプタ:

  外来語，社説，語彙調査，量的推移，Logistic曲線， S-curveモデル

  概要:

  この論文の目的は，大正時代から現在までの外来語の増加過程に ついて，理論的モデルを構築することである．

  この調査では，日本の新聞（朝日新聞，読売新聞）の社説を用い た外来語の語彙調査を行い，そこで得られたデータについて曲線の あてはめを行う．分析においては，本時系列データプロットについ て，非線形回帰{（y = K／(1＋a e-bx)，ロジスティックカーブ}を 適用した．

  この研究の結果は次の通りである．朝日新聞，読売新聞のデータ プロットはLogistic曲線によく適合した．したがって，Logistic曲 線は，大正時代から現在に至るまでの外来語の増加をよく表す理論 的曲線の一つであるといえる．

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• 種別:

  ノート

  著者:

  荻野 綱男

  題名:

  形容動詞連体形における「な／の」選択について: 田野村氏の結果を WWW で調べる

  ページ:

  309-318

  ディスクリプタ:

  WWW、な／の、程度副詞による修飾

25巻8号 (2007年3月発行)

• 種別:

  調査報告

  著者:

  つる岡 昭夫（「つる」は雨冠に鶴）

  題名:

  関西以東の「へ」と「に」の分布について─ 近代の小説を資料として

  ページ:

  341-351

  ディスクリプタ:

  助詞「へ」と「に」、川端康成、芥川龍之介，宮沢賢治，方言周圏論

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• 種別:

  調査報告

  著者:

  伊藤 雅光

  題名:

  第二次近似と第三次近似の特性分析に基づくテクスト合成法の改良

  ページ:

  352-370

  ディスクリプタ:

  マルコフ・モデル，シャノン，情報理論， 第三次近似流行歌モデル，短い単位，N-gram

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• 種別:

  ノート

  著者:

  荻野 綱男

  題名:

  最近の東京近辺の学生の自称詞の傾向

  ページ:

  371-374

  ディスクリプタ:

  自称詞，学生，敬語，東京